もりもとニュース

2003年 関西IT活用企業百撰入撰事例(2002年度) 最優秀賞受賞

関西の経済団体共同プロジェクト「関西IT推進本部」が主催する2002年度関西IT活用企業百撰最優秀企業に選ばれました。
また、受賞にあたり「リエゾン」様サイトの マガジンに取り上げていただきましたので、その記事をご紹介いたします。

2002年度 関西IT活用企業百選最優秀賞受賞 ・・・・・リエゾン様サイトマガジンより

「お酒のデパート『株式会社もりもと』」 〜IT百選優秀賞のお酒屋さん〜

「株式会社もりもと」は、創業70年のお酒屋さんです。でも、ただのお酒屋さんではありません。
そのITへの取り組みはほかに類を見ず、2002年度IT百撰において優秀賞に輝いたほどのすばらしさなのです。ITへの取り組みがどれほど成功しているかは、お店に行けばたちどころに解ります。ところ狭しとぎっしり並んだ世界中のお酒、おつまみ・・。壁の上までディスプレィされた店内には、いったいどれぐらいの商品があるのでしょうか。実は、この品揃えこそ、もりもとの秘密なのです。文字通り、「お酒のデパート」として阪急高槻駅前の本店をはじめ、府下に6つの支店と配送センターを展開する「株式会社もりもと」の成功秘話をお届けします。

自慢の酒屋の息子だったけれど

昭和11年、高槻に一軒の酒屋が開業しました。その名は「中島支店森本啓三商店」。現在の「株式会社もりもと」社長、森本章さんのお父さんの啓三さんが店主でした。当時4歳であった章さんは、優秀な成績で大学に進学し、酒屋を継ぐことなく、大企業に就職。在学中から才能を買われ、アメリカにて社会人生活をスタートしました。「酒屋の息子が出世したと言われ、親も鼻高々でした。ご近所中に自慢してたようです」。
しかしながら、そんな海外生活に嫌気がさして、章さんはあっさりと大企業を退職し、実家に戻ってきてしまったのでした。

もう酒屋をやるのはしんどい

近所中に自慢をしていた親としては、あっさり帰ってきた息子をすんなりと受け入れることはできませんでした。「恥ずかしいから離れたところで商売しといてくれ」といわれて、実家から少し離れたところを回って商売をするようになりました。しかしながら、人の口に戸は立てられません。すぐに息子が戻ってきたということは、みんなの知るところとなってしまいました。
ただでさえ、手間のかかる酒販店経営。啓三さんの心労は計り知れませんでした。とうとう体の調子も悪くなり、ある日章さんに「もう酒屋をやるのはしんどいから、おまえがやってくれ」と告げたのです。こうして、26歳の若さで、森本章さんは、酒屋の店主としてのスタートを切ったのでした。

もうこんなことやってられへん

お父さんである啓三さんから店を引き継いだとき、顧客数は約5,000軒でした。高槻を中心に、お客様を41地区に分け、11人の営業マンが毎日汗を流して回っていました。毎月二十日ともなると、10人ほどのパートさんが、必死で伝票を整理し、請求書を作っていました。
「もう毎月戦争でした。必死でやってるんやけれど、やっぱりそれは人の手。まちがいがあるんですわ。もうこんなことやってられへんと誰でも思いますわなぁ」とは章さん。今でこそ酒販店向けのPOSシステムなどが普及し、手書きの請求書こそ少なくなりましたが、当時はまだまだすべて手作業の時代です。何とかしようと思いながらも、いかんともし難い経営者がほとんどであったその時代に、なんと章さんはオフコン導入を決意します。

*1) オフコン:オフィスコンピュータの略。主に業務用に利用される中型コンピュータ

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銀行でもやってへんのに何で酒屋がオフコンやねん

実は章さんは、大学で流通業へのコンピュータ活用について論文を書いていたほどの専門家。オフコン導入には確かな勝算がありました。しかし、当時のオフコン導入には、かなりの資金が必要でした。「オフコンを入れたいから融資してくれって頼んだら、銀行の担当者に笑われましたわ。自分ら銀行でも活用できてないコンピュータを、なんで酒屋が入れる必要があるんやってね」
銀行マンでもその程度の認識であった時代です。しかしながら、章さんの決意は少しも揺るぎません。「癪に障るから別の銀行から何とか融資を取り付けて、オフコンを導入したんです。」それは、昭和48年、章さんが社長を引き継いでから、6年目のことでした。導入したからにはしっかり使う。もともとコンピュータ利用についてはしっかりしたビジョンがありましたから、そこはお手のもの。伝票のコンピュータ化だけでなく、売掛代金銀行自動振り替えも手がけ、成功します。「もうあほみたいに計算間違いで手間を取られることもなく、二十日に髪の毛振り乱すこともなくなりました。」

こうして、「株式会社もりもと」のIT化が始まったのでした。しかしながら、すでに章社長には、次にやらなければならないことが見えていました。それは、少ロット多品種の商売への準備です。「はじめたころは、品数はせいぜい2000アイテムぐらいでした。それが、あれよあれよという間に桁が違ってきたんです。今は20000点を越えていますから、それだけお客様の好みが多岐にわたって来たということですなぁ」と平然と笑顔で話す章社長には、当時から自分自身が組み立ててきたITシステムに対する自信がうかがえます。

注文が来てもモノが無かったらなんにもならへん

章社長が目指したものは、「完全な在庫の把握」でした。商品点数が増えても、在庫数や品切れが即時にわかるシステム。注文にしっかりと答えられる酒屋であるために、それは必須のことと考えていました。そこで、商品にはすべてバーコードを添付し、店売りも電話注文も含めすべての受発注を在庫と連動させたのです。さらに、当時本店のほかに2つあった支店(現在支店は6店)の売上げも、すべて本店で管理できるよう、ネットワーク化も行いました。どこよりも早く構築したこのシステムで、お客様のニーズに確実にこたえられる酒屋として、株式会社もりもとの発展の基盤が完成したのでした。このシステムがあるからこそ、「お酒のデパート」として店中に溢れている数々の商品を、しっかりと管理することができているのです。

ただやりたいと思うだけではできない

このようなIT活用は、いくら社長に知識があっても難しいこと。どうして章さんはそこまでの成功を手に入れられたのでしょうか。「もちろん、自分自身にIT利用の具体的なビジョンがあったことが一番の秘訣です。でも、それだけじゃない。私には、それまでに培った人脈がありました。大学時代、社会人時代、経営者になってからも、こまめにいろんなところに顔を出して来ました。そこで出会ったキーマンとの交流を大切にしてきたからこそ、たくさんの専門家の知識を活用することができたんだと思います。」と章さんは振り返ります。

社長室を見渡すと、あちらこちらの最新鋭の情報機器が目に入ります。「何でも自分でやってみる。そして、わからなかったら解る人に聞く。こうしてビデオ編集でもなんでもできるようになりました。」この姿勢こそが、移り変わりの激しい時代にあっても、いつでも最前線を走っていられる秘訣なのだと教えられます。ついつい面倒で後回しにしたり、人に任せたりしてしまいがちな経営者の皆さん、少し耳が痛いところですね。

自分ができる範囲で店を拡げていきたい

さて、システム化も進み、多品種小ロットの商品管理に確実に応えられる受発注システムの支えで売上げも順調に伸びました。かねてより、自分自身が見える範囲でしか商売をしないという信念を持つ章社長は、それまで高槻周辺にのみ支店を出してきました。「自分で見て回れる範囲でしか商売はせぇへんというのが私の信念です」とおっしゃる章社長は、あるときインターネットに出会います。常に最前線を走る章社長が、その潜在的な力を見逃すはずはありません。「自分ができる範囲で店を出す。しかし、インターネットは時間や空間の制限が無い。どこの誰にでもいつでも売ることができる」と確信した章さんは、早速ネットショップ開設に手をつけました。
さて、その取り組みはどのようなものだったのでしょうか。

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Virtual in Real

章社長に話を伺っていると、いつも「Virtual in Real」という言葉が出てきます。どういう意味でしょうか。
「ネットショップとは言え、お客さんは実際の人。目の前に居ないだけで、あくまでも普通の商売です。でも、今までと同じ品揃えではだめ。見えないバーチャルなお客様の好みをどれだけ把握し、タイムリーに品揃えできるかが重要なのです。」こう考える章社長は、ネットショップでは品揃えにこだわります。「どこにも無い商品、大衆には必ずしも人気の無い商品、でも、心からお勧めする商品であれば、ちゃんと見る人が見て買ってくれるのがネットショップ。」なのだということ。なるほど、もりもとのネットショップのワインリストを一度ご覧いただけるとその違いが解ります。一つ一つについたコメントは、ワイン専門メンバーが実際に味わって付けたものだそうです。このこだわりこそ、リピータ率の高さにつながっているのでしょう。何を隠そう筆者も1本購入させていただいたのですが、「何買いました?」という質問に「ルフィーノモドゥス」と答えると、間髪いれずに「それはおいしいですよ〜」と返ってきました。自分でテイスティングした味は忘れられないという皆さんのお話を伺うと、『プロなんだなぁ』と感心します。
もちろん、自分自身で味わったワインの味は、おすすめのとおりすばらしいものでした。

ここにしかない商品を

ネットショップもりもとの圧巻は、「中国酒」です。それこそ、ここにしか無い品揃えで、横浜中華街の人気中華料理店からも注文が入るほど。なんでも章社長が中国で直接発掘してきたお酒もたくさんあるそうで、一見(一飲?)の価値ありです。このほかにも、健康ブームということで、乾燥フルーツや各地の「水」もこだわりの品揃え。今後はサプリメントも販売していきたいとか。章社長の夢はどこまでも続きます。ここで普通のネットショップと違うのは、もちろんその商品もしっかり在庫管理されていることです。ネット上から注文される商品は、商品管理データベースと連動し、受発注システムに繋がります。このシステムの裏づけがあるからこそ、自信を持ってこだわりの商品をショップに掲載して行けるのです。

1日24時間ではとても足りない

ネットショップもりもとには、もうひとつ驚きの事実が隠されています。それは、商品撮影から掲載、おまけにメールマガジン作成・配信まで、章社長自らが行っているということです。「みんな忙しいからねぇ。担当者もおりませんしねぇ。」とおっしゃる章社長。しかし、実は自分自身でやってみて手ごたえを掴まないと気がすまないに違いありません。ただでさえ忙しい社長業の中で、ネットショップの店舗管理も行うとなると、1日24時間ではとても足りないとおっしゃいます。そんな中、1日8時間はパソコンに向かうという章社長の姿は、全員が溌剌と働く職場作りになによりもお手本になっているに違いありません。

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